バンコクナイツ

監督の前作「サウダーヂ」が(上映後、諸事情により殆ど再び観る機会を逸してしまった伝説的エピソードも含めて)凄く印象に残っていたので、とても楽しみにしてたのですが、3月の土日は予定がキツキツになっており、このタイミングしかもない!ってんで会社帰りにテアトル新宿で観てきました。

前作が甲府地方だったのに対して、今回の舞台はタイのバンコク。タニア通りという、日本人向けの歓楽街で働くタイ人娼婦ラックと、自衛官出身で、ラックの元恋人であるオザワが、数年ぶりに偶然の再会を果たすところから運命の歯車が回り始める。

なんて書くと、割と在り来たりなロマンスのようですが、そこは「サウダーヂ」の監督、そこに暮らす人々の文化、風習の描写が半端ない。まず、ラックの働いてる連れ出しバー?なんですが、店の入口にひな壇がありまして、そこに色とりどりの娼婦がズラーっと並んで、日本人のお客はその中から気に入った子を選んで、店で呑んだり、別料金払って連れ出したりする訳です。これは紛れもなく遊郭だ…。

他にも、日本とは全く違う方向に発展していったと思われる仏教文化(エキセントリックな極色彩の寺院とか)や、割とカジュアルに蔓延しちゃってるアイス(覚醒剤)中毒描写や、まあ、お仕事柄どうしても避けられないHIVやら、最初は単なる駐在員だったのに、なんだかんだで職を失い日本に帰って来れなくなった、「沈没組」と呼ばれる在タイ日本人やら、これでもかっと言うぐらい畳み掛けてくれましたよ。

特に圧巻なのは、後半にオザワが訪れる、ベトナム戦争の激戦地ディエンビエンフーの風景。広大な、美しいとさえ思える草原に、明らかに爆弾の投下によって出来たと思われる醜い無数のクレーター。いまも思い出すと胃が痛くなってきます。

でも、厳しい現実を突きつけているのに、映像や音楽は本当に繊細で美しかったです。ただ、けっこう長尺で、登場人物もやたら多いので、鑑賞後はパンフレットを買っておさらいする事をお勧めします(笑)