ムシムシ大行進

僕が偏愛する古典落語「疝気の虫」にまつわる話。

ある日、医者が見たこともない虫を見つける。捕まえてみると「自分は疝気の虫だ」と口を利き出し…

なんてもう、粗筋もへったくれもない噺。この「疝気」という言葉、今でいうと尿道炎とか膀胱炎とか、そういうシモの病気の総称なのですが、昔、病は体内の虫が起こしているという考えは、いわば常識でした。というのも、江戸時代は「細菌」という概念がなく、また、衛生面でも今とは比べ物にならなかった為、寄生虫に感染する人も多かったそうです(気になる方は「寄生虫+浮世絵」で検索!・・・グロ注意)。だから、病に倒れた人の遺体の中から、寄生虫が出てくる→じゃあ原因は虫だ!と、なるのは無理ない事だと思います。主役が医者である事からも、この噺はまず「①医学」がテーマなのは言うまでもありません。

体内に住んでいるとされる虫の種類は「疝気の虫」以外にも沢山あります。先日、入手したこの本は、戦国時代の医学書「針聞書」を絵本の形に起こし直したものなのですが、

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ここには、疝気のようなシモの病だけでなく、今で言う腹痛から歯槽膿漏から熱中症や躁鬱病まで、様々な症状を引き起こす虫が書かれています。中には「大酒の虫」なんてものがあって、

余談です。酔っぱらってべろんべろんになる事をよく「泥酔する」、といいますが、「泥酔」の「泥(でい)」、とはドロではなく、水のないところではドロのようになるという、空想上の虫の名前。べろんべろんに酔っぱらう姿が「泥(でい)」に似ているから泥酔と呼ばれるようになった・・・って説明に納得しそうになったのですが、そもそも、「現実」のドロに似た「空想上」の泥に、「現実」の泥酔者が似ているとはどういう事だ???

閑話休題。

とても面白いのですが、その中に実在する寄生虫と同じ名前の虫があります。それは、「蟯虫(ぎょうちゅう)」。子供の頃、ぎょうちゅう検査で、お尻に青いシールを貼ってもらった、アレです。蟯虫について「針聞書」では、このように書いてあります。

六年に一度めぐってくる「庚申」の夜、取り付いた人の体内からそっと抜け出す(中略)その人が抱いている欲望まで閻魔大王に告げ口し、地獄に落とそうとする。

この特徴、中国の道教に伝わる三尸(さんし)信仰が原型になっております。そういえばこの本を見つけたのは大妖怪展ですし、三尸は「しょうけら」と言う妖怪に深い関係があるとされております。また、こういった「原因の分からない異変を抽象化して形を持たせる」発想は、妖怪を生み出す過程と実に似ています。って事は、この噺は「②妖怪」もテーマになっているとも言えるでしょう。

最後に、この噺の中で、医者は「疝気の虫」から虫の弱点を聞き出し、それに基づいて患者に治療を施します。この、体内から情報を聞き出すという考えは、現代医療にも通じます。

http://irorio.jp/sophokles/20140122/105006/

ね。

つまり、現代において、疝気の虫は「③ナノテクノロジー」の存在を予知させるという…こんな多角的な、深みのある、かつ、ばかばかしい内容の噺が他にあるだろうか。

まあねっ!そんな小難しい話はどうでもいいのよ(権太楼師匠の口調で)

俺はただ、お尻かじり虫みたいな声で、ちんととさんの、ぱっぱっぱがやりたいだけなのっ!(まとめるのが面倒になったので論理を放棄)

 

たすけてくださいっ

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